「毒親」は誤解を生みやすい言葉

アダルトチルドレンのご相談でときどき、「生きづらさは感じていて親との関係が影響しているとは思うけれど、『毒親』かと言うとそれは違うと思っていて、アダルトチルドレンだと認めることは親を毒親と認めることなのかと思うととても抵抗があって・・」という方に出会います。

「毒親」という言葉はとても刺激的で、私も初めて知ったときは衝撃を受けました。

この言葉は、1999年に出版された『毒になる親』スーザン・フォワード著 毎日新聞社 が元になっています。

私は当時、まだ会社員でようやくアダルトチルドレンという言葉を知って自覚し始めた頃でした。本の存在は知っていましたが、まだ読む覚悟ができず、その数年後、アダルトチルドレンのワークなどをしてから文庫化されたものを読みました。

「毒親」という言葉が出てきたのは、そこからさらに10年くらい後ですが、初めて知ったときは、本のタイトルよりさらにセンセーショナルでグロテスクだと感じました。

アダルトチルドレンの認知には役立ったけれど・・

案の定、「毒親」という言葉はあっという間に広がりました。それと同時に、アダルトチルドレンということが世に知られるようになったことはよかったと思っています。ただ、怖れていた誤解が広まったのも事実です。

アダルトチルドレンの定義で今私がいちばんしっくりくるのは「今の生きづらさが親との関係に起因すると認めた人」です。親が明らかに毒だったと思える人はその一部であって、全員にあてはまるものではありません。

肉体的な暴力を受けていれば毒だと認めやすいでしょうけれど、友だち親子のような共依存的な関係だった場合、むしろ親のことは大好きだけど今生きづらいということもありえます。

問題がある親=毒とはかぎりませんし、まして大好きな親のことを毒だと認めなければならないとしたら、アダルトチルドレンのカウンセリングを受けることにためらってしまうのも無理はありません。

ACの回復は親と絶縁することではない

このこととセットで問題になるのが、生きづらさを克服するためには親と絶縁しなければならないのかという心配です。

実際に『毒になる親』の著者は、その後『毒親の棄て方』という本を出しています。

でも、これもとても誤解を招くことなので、説明させてください。

アダルトチルドレンの回復として目指すところは、親と絶縁することではありません。大事なのは、ご自身にとって(*親にとってではなく)快適な距離をとれるようになることです。

人によっては絶縁にいたることもないわけではないですが、ほとんどの方は、今より精神的物理的に距離をとることで心の平穏を得られています。

以前「うつは心の風邪」という言葉が流行ってうつ病が広く認知されるようになりましたが、「気合いで治る」などの誤解も生んでしまったことに似た現象かと思っています。私は個人的に「毒親」という言葉は好みませんし、使わないようにしています。


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